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大沢温泉 [旅日記]

我が家にも,いくつかお気に入りの宿というのがあります.
以前書いた”作並一の坊”もそうですし,阿賀野川上流にある”角神ホテル”も魅力的です.
そして,この数年来,もっとも気に入っているのが南花巻,大沢温泉”山水閣”です.

いずれも,とにかく温泉三昧ができる宿であり,そこそこ大きな温泉宿なんだけれども,
だからといって,そのことが決して悪い方向に向かっていない
むしろゆったりした落ち着きや,安心感の源となっている,そんな宿だと思っています.

さて,この週末は,久々に大沢温泉へと家族揃って行ってきました.
そんなわけで我が家がとても愛する”大沢温泉”の魅力を,ほんの僅かですが,つたない文と写真でご紹介したいと思います.
例の如くとても長いです.うまく伝わると良いのですが・・・
    

■Chapter1 大沢温泉の構造について
 大沢温泉の歴史はとても古いらしく,元々は湯治場でした.
 いまも自炊部として長逗留の湯治客でにぎわっています.
 湯治部から,豊沢川を挟み対岸には”菊水館”という木造藁葺きの風情ある別館があります.
 この2棟は川に架かる”曲がり橋”を通って往来出来ます(だんだん館モノになってきた^^;)
 そして現在では湯治部から続いて山水閣という,近代的なホテル部分もオープンしています.
 今回我々が宿泊したのは山水閣ですが,この廊下をくねくね進み,階段や扉を冒険のように
 どんどん通過してゆくと,いつの間にやら,あたかもタイムスリップしたかのように突然に,
 木造の自炊部の入り口である帳場へと出現するのです.この感覚が非常に心地よいです.
 
 図 大沢温泉おおざっぱな配置図(当然だが殺人現場も開かずの間も隠し通路も無い)

■Chapter2 午後5:30分:大沢温泉到着
 宿泊当日も,私は出勤(;o;)これだからいつも,ほんとの直前まで予約入れられないんです.
 先週まではまだ余裕があったのに,今週になって急に忙しくなるんだもんなぁ・・・
 それでも上司の粋な計らいもあり,無事家族旅行は実現しました.
 とはいえ,午後まで出勤していた私は,会社から直接出発し,家族と合流となりましたが.
 そんなわけで,山水閣に到着したのは既に17時を回った頃.まずはほっと一息.
 案内してきてくれた,客室係のFさん.とても明るくてにこにこきびきびしている.
 恐らくまだ10代ではないかと思う初々しさですが,礼儀正しい接客ぶりに好感.
 この宿の魅力の1つに,従業員がみんなきびきび,そして生き生きしていることがあります.
 例えば夕食の時分に廊下ですれちがったとき,先方は膳部を整えるのに大忙しだろうと思うに
 こちらに気づくと,実に楽しそうにニコッとわらってぺこりとお辞儀をしたりします.
 そんな様子がすごく爽やかで丁寧で,従業員の方々の心根の温かさが伝わってきます.



■Chapter3 午後5:45分:お風呂(第1弾)
 さて,浴衣に着替えたらひとっ風呂です.ここ大沢温泉には全部で5カ所の浴場があります.
 
 最も歴史が古く趣のあるのが”大沢の湯”,混浴の大露天風呂です,豊沢川を挟んだ対岸には
 明かりがとても美しい”菊水館””南部の湯”が見え,いやが上にも非日常感が生じます.
 イメージ的に,中山美穂が出演してた一番搾りのCMを思いだしましたね~
 手足を伸ばして,うぅ~っとヒト伸び.いや~ごくらくごくらく.
 
 注:携帯で撮影してたので,夜景はガンガンぶれまくってますが,気にせず乗せちゃいます.
   写真は露天風呂脇から菊水館方面.木造の建物にともる窓々の灯りが暗がりに浮かび
    まるで川沿いの料亭を対岸から眺めているよう.今にも三味線の音が聞こえてきそうな.ちんとんしゃん

 さ~て温泉ハシゴです.大沢の湯をあがったら,湯治部の歴史ある廊下を通って,一旦外へ.
 
 橋を渡って対岸へと移動します.菊水館にあるのは,さっき露天風呂から見えた”南部の湯”
 木造りのとても暖かみのある浴場です.
 夏の天気の良い日には2面の窓が全部開放されて半露天風呂状態になります.
 それもまた開放感上々ですが, こういう木枯らしの吹く初冬の夜に
 暖かい湯気の中で曇るガラスに囲まれた浴場というのも
 じつにじつに温かな気持ちになるものです.上の息子と二人でまったりと入浴.
 

■Chapter4 午後6:20分:お風呂上がりといえば・・・
 大沢の湯・南部の湯方面から山水閣へ戻るためには,
 途中自炊部を通ってゆく必要があります.
 自炊部といえば・・・そう.売店です.
 売店といえば・・・そう.冷蔵庫(笑)当然息子達はここへ引っかかります.
 
  
 恒例のシャーベットタイム.
 私はすかさず四合瓶を買い込み(^^;

■Chapter5 午後6:30分:ハシゴタイム・・・
 温泉フェチな私と上の息子は,売店で一息ついたら更に温泉ハシゴ
 ”貸切り風呂”へGoGo.空いていれば,宿泊客は自由に利用できます.
 全風呂制覇のためには,貸切り風呂も外さない.
 ちなみに貸切り風呂は3室あって,一番奥はバリアフリーになっています.
 動線も浴室スペースもゆったりしております
 身障者の方は,介助が必要だったりして,なかなか温泉に二の足を踏む方も多いですが
 こうした設備が他にもどんどん増えると良いですね.
 昔々,青森のおおわに山荘という国民宿舎の別館が出来た際,浴室などが全てバリアフリーで
 子供心に関心した記憶がある.あそこ,今も営業してるのかな.
 まぁ本当はみんな同じ広いお風呂で,当たり前のようにユニバーサルな付き合いが出来るのが
 ベストなわけですが・・・(温泉って,特に湯治場って本来そういうもんですよね?)
 さて,我々は,真ん中の,こぢんまりした風呂へ入浴.
 

■Chapter6 午後7:00分:お待たせしました夕食タイム
 風呂から上がって部屋に戻ると,丁度夕食の準備が出来たところ.
 同居人と下の息子は我々を待ちかねて,そわそわそわそわ
 

 山水閣は,特に奇をてらった料理は出しませんが,ごく当たり前に質の良い料理を出します.
 そのため一見しただけでは,いかにも温泉旅館の夕食といったイメージがありますが,
 その実,地元の良質な食材を充分に生かし,随所に創意工夫が見られます.
 このあたりは調理部門の責任者の方の,センスというか見識ではないかと思っています.
 数年前まで,やや濃いめの味付けの印象でしたが,近頃はあっさり目になってきたようです.
 毎回おぉっという料理が1つはあって,以前,大根のかつらむきを巻いて作った器に
 お刺身が盛り合わせてあるような一品に感心したことがある.
 そのまま崩して,刺身もろとも醤油ベースのドレスであえるとサラダになるという趣向.
 今回の料理の中から特筆するならば,味噌仕立ての鍋とアワビの皿の二品が出色でした.

 あぁそうそう.同居人の意見としては,とにかく御飯が美味い.とのこと.私も同感です.
 あぁそうそう.息子らの意見としては,とにかくデザートが美味い.とのこと.ははは.まぁね.
 

                        *

■閑話休題:自炊部風景あれこれ

とにかく木の風格ある建物というのは良いものです.
帳場とその横の待合い場も,昔ながらの雰囲気で,調度もあえてレトロ調.
居心地よくて,ついつい長居したくなります.
夜は上手く撮れなかったので,殆ど朝の写真ですが,
夜は夜とて,建物中に白熱灯の優しい光が満ちるのも幸せな光景.
自炊部の食堂脇には炊き出し(!)コーナというのがあって,おにぎりなども売っている.

                        *

■Chapter7 午後9:00分:温泉タイムぱーと2
 さて,お腹もみたされて,ほどよく収まってきたところで,再び温泉散策です.
 
 先ずは自炊部の方へ行き,内湯である”薬師の湯”へ.
 ここの浴室は,昔からある温泉旅館の浴場によく見られるような漆喰の白壁造りで
 曲線状にタイルでかたどられた浴槽が2つ.
 

 私としては,最も温泉場らしい浴室ではないかと思っています.
 なおかつ曲線を生かしたデザインが実にモダンでもあり,2階建て吹き抜けの建物には
 廊下側の入り口から螺旋風の階段を下っていくという凝った意匠.
 個人的には大沢温泉で一番好きな浴場だったりします.
 
 
 何となくこの浴場には,夜が更けてから,暗い木の廊下をギシギシしないよう,そっと通り抜け
 ぽつりと独り静かにつかるのが似合うような気がしています.

 風呂場の入り口を出た廊下は休憩スペースとなっており(これも温泉旅館っぽくて良いですね)
 窓の外には,夜の豊沢川がさわさわと控えめな音を立てて流れています.
 
 

 続いては,再び木造りの自炊部を通り抜け山水閣へ舞い戻り.
 山水閣1Fにある"豊沢の湯”へ.
 ここは今の時期(晩秋から初春にかけて)は内風呂になっていますが
 それ以外の時期は,豊沢川に面した壁一面が無くなります(つまり半露天になるわけですね)
 これがまた実に良くできており,露天風呂でありながら,屋根がある良さというのもあったりして
 例えば,雨の露天風呂というのは気持ちよさげで,実はやってみると意外に辛い面もありますが
 ここでは新緑萌ゆる初夏の季節などは,むしろ多少なり雨が降ったりしてくれた方が.
 雨に濡るる木々の葉色や,川に落ちる雨の音を愛でつつ湯につかる心地よさといったら
 えもいわれぬものがあります.
 そういった意味では,冬場のあいだ内風呂になってしまうのはちょっと惜しくもあるのですが,
 これはまたこれで,湯けむり漂う浴室内にともる灯りがぼんやりと,良い風情です.
 

 すっかり体の凝りも抜け,酒はまだ抜けず(^^;
 心地よい疲れの中,熟睡.息子らの手足が一晩中私の上で飛び交うのも何のその(笑)

■Chapter8 午前7:00分:温泉タイムぱーと3
 
 気持ちよく目覚め,菊水館方面へ朝の散歩.
 こちらは自炊部の玄関.とても歴史を感じる良い風情の玄関です
 
 橋を渡って,朝靄の中の菊水館.これまた実に趣のある建物です.
 
 
 菊水館の横には水車が.中をのぞくとどうやら現役です.
 
 
 時折流れ落ちてくる水に,ゆっくりと回転します.
 

 橋の向こうには大沢の湯が.朝は朝とて,既に大賑わい.
 小雪舞うながらも,気持ちの良い温泉宿の朝.
 

 部屋に戻って朝食前に最後のひと風呂.
 朝は毎回”山水の湯”
 こちらは近代的な,シンプルな造りの浴場で,大沢のなかではあまり目立たない存在ですが,
 こぢんまりとした露天風呂なんかもついて,最後のシメにふさわしい気がします.
 
 温泉の桃源郷を一晩漂った朝湯.
 ”よし,これで夢はおしまい.”という気持ちにさせるかのような,きりっとした佇まいです.
 ・・・とはいえ
 丁寧にひげを剃って湯につかり,"今度はいつ来ようかな~”と,もう次のことを考えています.

■Chapter9 午前9:15分:ふたたび日常の世界へ
 おいしい朝食を食べてコーヒーを飲み
 部屋に戻ると,もうひと寝する間も無く,チェックアウトの帰り支度.
 最近では,チェックアウトが11時とか12時とかの宿も結構ありますけどね,
 何となく,大沢温泉は昔ながらの15時~10時のままで良いような気がします.
 勿論長くしてくれるなら,それに越したことは無いですがね.
 大沢温泉全体に流れている雰囲気というか佇まいが
 そういう昔ながらの温泉旅館のやり方と,よくなじむような気がするんです.
 もし温泉宿としての現代的な新しい試みを次々と取り入れていったら,
 その代わりに,大沢温泉に漂っている何かが消えてしまうような気がして.
 まぁ,使えるクレジットカードの種類が増えたのはありがたいことですが(笑)

■Chapter10 さいごに:まとめと追記
(例のごとく)長々と,だらだらと書いてきました.
 ここまで,飽きずに(飽きながらも?)読んでくださった方,感謝です.もうちょっとだけ書きます.
 初めて泊まった頃は,そうでもなかったですが
 TVなどで頻繁に紹介されるようになり,昨今は全国的にも結構メジャーになってしまい,
 なかなか予約が取れなくなってしまいました.喜ばしいような悲しいような(笑)

 たぶん全国旅の宿なんとかランキング~の1位とかになる宿では無いと思います.
 安月給な我が家は高級な世界はよく知りませんが,
 正直言って,もっと洗練された宿,これでもかというほどサービスの行き届いた宿は
 全国規模で云えば,きっと沢山あるのだろうと思います(大沢温泉の方すみません) 
 だから,そういうものを求めてこの宿に泊まると,もしかして”な~んだぁ”となるかもしれません.
 だけれども,ここにはそういった客観的な評価項目ではない,”何か心にとまるもの”があります
 我が家は初めて泊まった際,その何かに気づき,それが気に入り,そしてリピータになりました
 それは,長い温泉宿としての歴史や,建物が醸し出している雰囲気なのかもしれませんし
 宿に働く方々の温かさなのかもしれません.よくわかりません.

 毎度毎度,朝食の会場で,これだけの客が建物内にいたのか,と改めて驚くわけなのですが
 これだけ満員御礼で混雑していても,この宿に喧騒はありませんし,浴場はいつも清潔です.
 相変わらず従業員の方々はニコニコして楽しそうに廊下を行き来して働いています.
 反対に自炊部とか菊水館の方に行くと,今度は至る所喧噪と活気という感じですが
 それはまるで,みんな修学旅行か,あたかも古くからのご近所さんのような心地よい雰囲気です

 何よりも.
 温泉が大好きという方.特に温泉の成分だけではなく,その佇まいに引かれるという方
 少なくともあなたには,きっと気に入っていただける宿なのではないかと思います.

 おしまい.


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