SSブログ

この手の中にあるかけら [ふと思ったこと]

初めにお断りしておきます。長文です。
自分で言うのもなんですが、いろいろなことが入り組んでいるものですから。
多分、後から修正もかけると思います。

それでも、ここ数年自分自身が抱えつづけ、あがき、考え、行動してきた、それらの一つの集大成にあたるものです。
私にとって今この記事を書くことが、必要でした。

それでもよろしければ、どうかお付き合いください。


2006年4月1日土曜日。
新宿・紀伊國屋ホール、『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』刊行記念ワークショップにて。

ズーニーさんが、会社を辞めるきっかけとなった、異動の話をしていた。
私は、自分が異動を命じられた6年前のことを思い出して、溢れ出す涙をこらえていた。

異動を一旦受けたとき、体から力が抜けた、心が折れたとズーニーさんは言った。
ズーニーさんは、会社を辞めることで最終的に自分の心を貫いた。
私は、異動命令に従った。
そして、心を折った。


2006年2月。
私は、会社を辞めようと、別の会社の社長と相対していた。社長は会社を辞めて自分の会社を立ち上げた、元同じ会社の人だった。
何かにつけ言葉を詰まらせる私に対し、社長は尋ねた。
「お前、仕事に自信ないのか」
少なくとも、エンジニアとしては実績をあげてきた。私は思わず声を荒げた。
「そう。実績をあげてきた」
そのとき、私の中にくすぶっていたもやがすっと晴れるのを感じた。
「一緒に、やりましょう」
社長は静かに続けた。

帰りがけからずっと考えていた。何故私の心が晴れたのだろうかと。
社長が私を認めてくれたから?
確かに社長は私を認めてくれた。ただ、何かがしっくりこなかった。
それから日が変わっても、ずっと考えつづけていた。


2000年春。
私は、精神的に追い詰められていた。上司は”できの悪い部下”をひたすら指導しつづけた。
私は自分なりに周囲のことを、お客様のことを考えて行動していた。少なくとも本人はそのつもりだった。確かに、結果は伴わなかったけれど。
しかし、失敗を繰り返した私に、上司は言った。
「そんなものはお前の思い上がりだ。嘘っぱちだ」
”違う!”その叫びは続く上司の罵倒に押しつぶされた。
「人間として信用できない」
"元々信用などしてもいなかったくせに"その怒りの声は、声にならぬまま、のどの奥で押しつぶされた。


部門長が私を呼び出して、異動を告げた。
部門長は言った。お前を置いておくと部門全体の雰囲気が悪くなる。
私には、何も返すことができなかった。
”行動を改め結果を出す。だからチャンスをくれ"。その言葉を口にすることは私にはできなかった。
気持ちはどうあれ、自分の実態が伴っていないことは自覚していた。
裏づけのないものを気持ちだけで押し通すことを、自分に対して許すことはできなかった。
周囲のためと言われれば、何も言えなかった。それが、私にとって一番大事なことだったから。
反駁するための力も失っていた。
私は力なく頷くしかなかった。

最後に、部門長は訊いた。
「お前、周りに目を向けないようにしていただろ。何故だ」
自分では気づいていなかったか?という投げかけに、私はいいえと答えた。
「周りを見て、余計なことをして、みんなに迷惑をかけたら・・・」
私は答えた。
「困るから」
そういった瞬間、私の左眼から涙が零れ落ちた。

そして、私は、心を折った。
そして、私は”周囲のことを考えない奴”という枷に絡めとられた。


http://blog.so-net.ne.jp/Mishika/2004-12-09
http://blog.so-net.ne.jp/Mishika/2004-12-25
http://blog.so-net.ne.jp/Mishika/2005-03-12-2
何度も何度も繰り返し繰り返し、思い返すたびに歯を食いしばりながら涙を流し、どれだけ地面をのた打ち回っても、くすぶりつづけたどす黒い思いは若干軽くなりこそすれ、なくなりはしなかった。
カウンセリングを受け、人に話し、blogに書き連ねても、どこまでももやはくすぶりつづけた。

口先では"私にも悪かった点もある"だの"上司も正義感が空まわっただけ"などとわかったようなことを言いながら。
私は自分の脳裏では、何度も上司を殴り殺していた。


2006年4月1日土曜日。新宿・紀伊國屋ホールにて。
壇上で一人の女性が溢れる涙をぬぐいながら、「私は、生きたい!」そう叫んだ。
私は目から溢れそうな涙で、胸がいっぱいだった。
http://www.1101.com/essay/2006-04-05.html
彼女のスピーチを聴いて、私は”かなわない"と思った。
私は、彼女ほどの深度で、自分の奥底と向き合うことができなかった。
私は、彼女のように、自分の存在が根幹から揺らいでいることを知っていながら、彼女のように自分の存在が危ういことを何百人の前で認めることなどできないと思った。

父親を憎んでいた、殺してやると思っていたという男性がいた。
私は男性のように人を害するほどの激情を抱えながら、それを人前にさらすことができなかった。

日が変わっても、何日も経過しても、私はワークショップのことを考えつづけた。

自分の中で消化するには、ワークショップのスピーチは、あまりにもインパクトが大きすぎた。


ワークショップで行われたインタビュー形式の質問に対して、私は元上司のこと、自分の仕事のこと、お客様に提供したいと思っているシステムのことを応えていた。
http://blog.so-net.ne.jp/Mishika/2005-04-09-2
その脳裏には、あの会社の社長の言葉があった。
社長と会っていたのはワークショップの数ヶ月前。
それだけの期間ずっと考えつづけていても、まだ答えはでていなかった。

ワークショップが終わり。日が何度も変わり。
それでも私は、ワークショップでの自分の回答、自己紹介、元上司とのこと、社長の言葉、それらのことをずっとずっと考えつづけ。
突然、思い至った。


私は、他の人のことをとても大切に想っているということを。
他の人が社会の中で生き生きと思うままに力を振るう姿を見る、そのためなら、自分がどうなろうと構わない、私は何でもするのだと。
私自身ができることは少ない。人と関わることに苦手意識もあった。だから、自分が他の人のことを考え、そのために行動することに自信が持てなかった。
だけど、だからこそ、私はその人がやりたいことを捉え、そのことをバックアップするシステムを作ることなら、私にはできると信じた。
そのために、私はシステムエンジニアを目指したのだと。
私が、ワークショップで話したかった、自分で認められずにいた、自分の想いはまさにそのことだったと。

自分にとって一番大事な想いを、私は外圧に負けて投げ捨ててしまった。
それが自分にとって絶対の真実だったのに、否定する周りの声に見失ってしまって、手放してしまったと。

一旦投げ捨ててしまったが故に、投げ捨ててしまった自分を認められなかったが故に、私は何年も過去を引きずってきてしまったのだと。
だから、私は元上司を許せなかったのだと。

社長の言葉は、私が自分でも気づかぬうちに、他人のことを想い続け、そのために行動してきたことを示したのだと。

そのことに思い至った瞬間、私の目から熱いものがこみ上げていた。


私は、志を失ってなどいなかった。
確かに、一度志を折ったけれど、そのかけらは私の手の中に残っていた。
そのかけらを、自分でも気づかぬ内に必死に握り締め、そのかけらだけを守り、そのかけらだけを頼りに、必死に這いつくばってここまできた。

それが、自分でも気づかぬうちに、自分の力となり、支えとなり、そして、実際の結果に結びついていた。


これで、揺らぐ自分がもう大丈夫になった、とは言わない。
きっとこれからも揺らぐだろう。

それでも、この手の中に、この胸に、私の願いはある。
外圧に自分自身が見失っても、ずっとこの手に握り締めつづけ、こうやって思い出せた。

時に忘れても、思い出せる。取り戻せる。
そのためにこの記事を書いたのだから。


nice!(5)  コメント(8)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 5

コメント 8

ともたろう

「私は、他の人のことをとても大切に想っているということを。」

感動してしまいました…。 
なんか、凄い瞬間に立ち会ってしまいましたね、私。
Blogって凄い。
by ともたろう (2006-05-07 00:57) 

Mishika

>ともたろうさん
nice!&コメントありがとうございます。
立ち会っていただけて嬉しいです。ともたろうさんは証人ですね。^^

何年もかかり、色々手をかけてやっとここにたどり着いたって感じです。
by Mishika (2006-05-07 09:09) 

もん・とれ。

自分はいわゆる、自己顕示欲かアイデンティティの確認か、「指導しようとして時に萎縮や恐怖を生み、相手を苦しめてるのかもしれない」の思いに駆られる側の人間です。
そういう性格です。どこか異常なくらいウエットだけれど、それを人に見せるのをよしとしないのです。
自分が最たる劣等生だったから、何が分からないのか聞き方すら分からないで自分の中でグルグルする人間だったから、いたわりを渡すより、鞭を渡しているのかもしれません。
それは思い違いかもしれません。
最近、反省することがよくあります。
でも、「あなたを大切に思っている」とは、一生気恥ずかしくて云えない。
あ、ここでも巧く云えていませんね。

ttp://www.youtube.com/watch?v=DqrAzbhRVsA&search=shout%20tears
今でもよく聴きます。よろしかったら、お時間のあるときに、どうぞ。
by もん・とれ。 (2006-05-07 12:23) 

あまちゃん

自分も言われましたよ。
「お前を置いておくと部門全体の雰囲気が悪くなる。」
上の連中の勝手な思い込みでしたけど。
自分も異動させられました。
同じ目に遭っている人がいるんですね。

外圧と戦うのは楽しい。
近頃、自分はそう思いはじめました。
by あまちゃん (2006-05-07 14:39) 

Mishika

>もん・とれさん
コメントありがとうございます。曲のご紹介ありがとうございました。
記事だからかけましたけど、私も口では「大切に想っている」とはいえないですね。

皆、周りの方のことを大切に想うし、誰かにとって大切な存在になりたいって想っているのに、何て口に出すのが難しいんでしょう。。。
by Mishika (2006-05-07 20:51) 

Mishika

>あまちゃんさん
nice!&コメントありがとうございました。
大変でしたね。。。私は、まだ楽しいという境地にはたどり着けません。
外圧以上に、内圧がやっかいです。(苦笑)

私の場合、精神的に参っていて休職を勧められるぐらいだったので、やむをえない側面はあったかなと思っています。
ただ、私が身動きできず声を上げられなかったため、上司側の言い分だけしか部門長に伝わらなかったことが、悔やまれます。
by Mishika (2006-05-07 21:12) 

tooshiba

己の信念を貫くためにどれだけ辛い思いをなさったことでしょう。
逃げてばかり。あるいは追い出されてばかり。の私には、想像もつきませんが、Mishikaさんのこれからの人生に幸多からんことを祈ります。
by tooshiba (2006-05-14 02:13) 

Mishika

>tooshibaさん
コメント&nice!ありがとうございました。
私も逃げたり、ひとのせいにしたり、自分を追い込んだり。

ただ、自覚していなくても、そういう自分と同時に、自分の願いも自分の中にあるのだなと、この一件で思いました。

tooshibaさんにも幸せがふりそそぎますように。
by Mishika (2006-05-16 06:14) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1